日本では、ギャンブル被害の防止に向けた十分な資金を備えた独立した制度が整備されるまで、新たな統合型リゾート(IR)を承認すべきではない──。そう訴えるのは、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会(SCGA)」の代表理事、田中紀子氏だ。田中氏の発言は、北海道でカジノを含むIR誘致を進めるべきかどうかが議論される中で行われた。
SiGMA Newsの独占インタビューで、道の最新IR有識者懇談会終了後に田中氏は、日本の現行ギャンブル規制は、国内で変化するギャンブル環境に対応できていないと指摘した。
「予防や支援に必要な人材・資源・資金を含む体制が十分に整備されない限り、新たなカジノの開設には反対です」と田中氏は強調した。
日本では、次回のIR申請受付が2027年に予定されている。7月中旬には北海道で第5回IR有識者懇談会が開催され、責任あるギャンブルが、道のIR政策の枠組み案や開発コンセプトと並ぶ主要議題となった。また、アジアにおけるカジノ規制の模範例としてしばしば挙げられるシンガポールのギャンブル制度についても検討が行われた。
約束は果たされなければならない
しかし田中氏は、日本がどのように新たなカジノを整備するかを議論する前に、2018年にカジノ関連法が成立した際に約束された責任あるギャンブル対策が実際に履行されたのかを検証すべきだと考えている。
「日本におけるギャンブル依存症による被害は、もはや看過できない水準に達しています。そして2018年にカジノ解禁が承認された際に約束された依存症対策の強化は、まったく実現されていません」と同氏は述べた。
「北海道がIR誘致を進めるかどうかを検討する今、単に『経済効果』を訴える段階はすでに終わっています。」
― SCGA代表理事 田中紀子氏
田中氏はさらに、日本では違法オンラインカジノの急増に加え、ギャンブル利用者の多重債務や20〜30代の若年層を狙ったヤミ金融による搾取、さらにギャンブル関連犯罪や自殺の増加といった問題にも直面していると指摘した。
「私たちの団体による調査では、依存症当事者1人あたりの平均借金額は1,000万円を超えており、深刻な社会問題となっています」と同氏は語った。「ギャンブルによる被害を防止・軽減するための実効性ある対策が不可欠だという認識が広がっています。」
シンガポールのIRモデルが示す教訓
シンガポールは、アジアでも責任あるギャンブル規制の代表例とされている。同国ではNational Council on Problem Gambling(NCPG)が自己排除制度、家族による排除制度、カジノ利用回数制限などを運営しており、政府も厳格な広告規制を実施するとともに、ギャンブルによる被害を継続的に監視している。
一方で田中氏は、日本が他国の制度を模倣することよりも、自らがすでに約束した改革を実行することに重点を置くべきだと主張した。
「2018年にIR法案が成立した際、政治家たちはNCPGのような強力で独立した機関を設立し、厳格な排除制度を導入すると約束しました。しかし、その約束はいまだにまったく果たされていません」と同氏は語った。
また、日本はパチンコ、公営競技、違法オンラインカジノが社会に深く浸透しており、シンガポールよりもはるかに大規模で複雑なギャンブル環境にあると指摘した。
「2025年の英国と同様に、日本でも事業者の売上に応じた法定拠出金制度を義務化し、年間数百億円規模の依存症対策だけを目的とした独立基金を設立すべきです」と田中氏は述べた。「一般財源や毎年変動する予算配分に依存してはなりません。」
IR政策に対する世論は変化したのか
田中氏によると、2019年の第1回IR公募時と比べ、日本国内の世論にも変化が見られるという。大阪には、日本初の認可統合型リゾート「MGM大阪」があり、日本のカジノ規制を占う最大の試金石となっている。総事業費1兆5,100億円(92億米ドル)の同プロジェクトは夢洲で建設が進められており、2030年の開業を予定している。他の都道府県がIR誘致を検討する中、その動向が注目されている。

田中氏は、大阪府で責任あるギャンブル啓発活動の一部が専門知識を持たない広告代理店へ委託されていることに対し、批判が高まっていると指摘した。
「こうした取り組みは、単なるパフォーマンスとしての責任あるギャンブルに過ぎないという見方が広がっています」と同氏は述べた。
さらに田中氏は、2018年のIR法案審議当時、国民の約70%がカジノ合法化に反対していたにもかかわらず、与党によって法案が成立したことに触れた。その後、特に若年層を中心にギャンブル被害はさらに深刻化している一方、IR法成立時に約束された安全対策はいまだ実現していないとの見方を示した。
基本的な安全対策を超えて
田中氏はまた、責任あるギャンブル施策をカジノ事業者だけに任せるべきではないと強調した。「政策立案やプログラム設計は、支援団体、医療専門家、そして当事者家族の知見を中心に進めるべきです。事業者は資金提供とコンプライアンスの徹底を担うべきですが、治療・予防・支援は独立した第三者機関が主導しなければなりません」と述べた。
さらに、施策導入後も継続的な効果検証が必要だと訴えた。「継続的なデータモニタリングおよび評価システムが必要です。独立した研究機関が、導入した施策が実際に被害軽減へどの程度寄与しているかをリアルタイムで測定・評価しなければなりません。そして効果が確認できない施策については、速やかに改善または廃止できるガバナンス体制を整える必要があります。」
北海道は、改定IR政策および開発コンセプトの素案を9月に道議会へ提出し、その後10月に両文書を正式決定する予定となっている。現時点では、正式にIR誘致へ踏み切るかどうかは決定していない。
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