全米大学体育協会(NCAA)は、大学スポーツの予測市場の急速な拡大が学生アスリート、消費者、そして大学スポーツの公正性に深刻なリスクをもたらすとして、米商品先物取引委員会(CFTC)に対し、これら市場の停止を正式に要請した。
2026年1月14日付でCFTCのマイケル・S・セリグ委員長宛てに送付された書簡の中で、NCAAのチャーリー・ベイカー会長は、より強固な安全対策が整備されるまで、大学スポーツ予測市場における取引を直ちに停止するよう求めた。ベイカー会長は、将来的な枠組みの構築に向けて連邦規制当局と協力する用意があるとしつつも、現行制度は不十分だと強調した。
「学生アスリートの福祉と競技の公正性を守ることは、NCAAにとって最優先事項です」とベイカー会長は記し、大学スポーツの予測市場が持つ「行き当たりばったりな性質」が、その双方にとって重大な脅威になっていると述べた。
NCAA、予測市場はスポーツ賭博と同質と指摘
書簡では、実態として予測市場は従来のスポーツ賭博とほぼ同様に機能していると主張している。ベイカー会長は、運営事業者が大学の試合を対象に、マネーライン、トータル、スプレッド型といった、市場認可を受けたスポーツブックですでに提供されている商品と酷似した取引を提供していると指摘した。
また、大学スポーツの予測市場には、規制されたスポーツ賭博では標準となっている多くの安全策が欠けていると述べた。NCAAが特に懸念しているのは年齢制限で、予測市場では18歳以上の参加を認める場合が多いのに対し、多くの州ではスポーツ賭博に21歳以上という制限を課している。これにより、大学生だけでなく高校生までもが有害な活動に引き込まれる恐れがあると警告した。
広告面での懸念も示されている。スポーツブックは大学キャンパス内でのマーケティングに制限を受けている一方、予測市場には同様の制限が一貫して適用されていないという。特に、学生の中には予測市場での取引を賭博ではなく金融投資の一形態だと誤解する可能性があり、これは深刻な問題だとNCAAは指摘する。
さらに、賭け手の位置情報データの欠如や、不審な取引を認可された仲介機関を通じて共有する正式な義務がないことなど、インテグリティ(公正性)監視体制の不備にも言及している。
もう一つの大きな問題として、NCAAのような全国的統括団体が正式に関与していない点が挙げられた。スポーツ賭博では、運営事業者は市場承認、公正性報告、調査に関してリーグと連携する義務があるが、予測市場の運営事業者には現在、そのような義務が存在しないとベイカー会長は述べた。
トランスファーポータルをめぐる論争で緊急性が増大
NCAAの今回の働きかけは、予測市場運営会社カルシが、個々のNCAA選手がトランスファーポータルに出入りするかどうかを取引対象とする計画を、強い反発を受けて撤回した最近の論争を受けたものだ。
カルシは、トランスファーポータルに関する判断に連動したイベント契約を自己認証するためCFTCに申請していたが、ベイカー会長はこれを「断じて容認できない」と公に非難した。選手個人の進路決定に焦点を当てた市場は、選手への嫌がらせを増加させ、大学スポーツへの信頼を損なうと警告した。
The @NCAA vehemently opposes college sports prediction markets. It is already bad enough that student-athletes face harassment and abuse for lost bets on game performance, and now Kalshi wants to offer bets on their transfer decisions and status — this is absolutely unacceptable…
— Charlie Baker (@CharlieBakerMA) December 18, 2025
この批判から数時間以内に、カルシは当該契約を進めないと表明し、最終的に上場されない市場を定期的に自己認証しているにすぎないと説明した。
このトランスファーポータルをめぐる論争は、NCAAがカルシに要請し、両組織の間に関係があるかのような示唆をやめるよう求めた件に続く、両者の緊張関係の一環でもある。
プロップベット、嫌がらせ、そして被害軽減
ベイカー会長は、学生アスリートの福祉への影響を理由に、多くの州ですでに制限されている大学スポーツのプロップベット市場に対する、従来からの反対姿勢も改めて強調した。現時点で大学スポーツの予測市場にこうした商品が存在するかは不明だが、NCAAは、いずれ事業者が承認を求めてくるのは時間の問題だと警告している。
書簡ではまた、賭博結果に関連して学生アスリートへの嫌がらせが増加している点にも触れ、複数のプラットフォームを横断して加害者を排除できる仕組みを含む、強力な反ハラスメント対策を求めた。
さらにNCAAは、被害軽減のための資金拠出についてもCFTCに検討を求め、多くの州がスポーツ賭博収入の一部を、大学キャンパスにおける教育、スクリーニング、治療プログラムに充てている点を指摘した。
停止と協力を求める呼びかけ
締めくくりとして、ベイカー会長は、適切な保護策を備えた将来の市場設計に協力する用意があることを表明しつつ、大学スポーツの予測市場における取引を一時停止するようCFTCに求めた。
この要請は、予測市場がスポーツ分野へ拡大する中で、連邦による監督のあり方が一層注目を集めていること、そして金融取引とスポーツ賭博の境界線がどこに引かれるべきかという根本的な問題を浮き彫りにしている。
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